「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」の話がしたい
「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」を知っているでしょうか。
もしかしたら名前くらいなら、Twitterのタイムライン上で見かけた人もいるかもでしょう。なにせニコニコ動画がこの作品のことが大好きなので。
B級ホラーが好きな人も、B級ホラーが苦手な人にもオススメです。
『魔法少女まどか☆マギカ』とか『ジョジョの奇妙な冒険』とか『アベンジャーズ』とか『クトゥルフ神話TRPG』が好きなひとに、大プッシュしていきたい作品です。
B級ホラーに限らず映画が好きなのですが、学生時代に発動してしまった腰椎椎間板ヘルニア(未手術)により、椅子に座り続けるのがわりと辛いので映画館に行くことは少ないです。
あと立地的に遠いという悲しい田舎のサガもあります。
とりあえず時間がある人は
『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!FILE-01【口裂け女捕獲作戦】』
『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!FILE-02【震える幽霊】』
『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!FILE-03【人喰い河童伝説】』
あたりまで見てください。流し見でもいいです。
もし上記の作品をみて見てピンとくるものがなければ、ブラウザバックして『貞子vs伽椰子』を見てください。『貞子vs伽椰子』はアマゾンプライム会員なら無料で見られます。
「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」は白石晃士という人が監督&脚本&演出をつとめています。
とはいっても、映画監督の名前を覚えている人は、映画エンジョイ勢の中でもあんまりない層だと思います。
私も監督名で作品の期待するのは、白石晃士監督と、「作る映画が同人新刊」と名高いガイ・リッチー監督くらいです。
なので簡単に説明すると、白石晃士監督は2016年公開のホラー映画『貞子vs伽椰子』の監督&脚本の人です。
日本を代表する2大ホラー映画である『リング』『呪怨』のメインヒロインである貞子と伽椰子がシバきあうジャパニーズ・オカルト頂上決戦映画です。
これも面白いので見て。
この「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」は独自の世界観で構成されてます。
どういう風に独自なのかって言うと、『霊体ミミズ』(←非公式名称)という黒い物体が怪物からうようよ出てきたり、クソコラCG空間が画面いっぱいに広がったり、主人公は男女平等にグーパンしてくるようなクソ野郎です。
登場するキャラクターがとても魅力的で、個性が突き抜けるほど豊かです。
平たくいうと人間性がアレな感じの人物が大量に出てきます。
私が推していきたい部分は、この白石晃士監督のワールドにおける
『神という存在について』
です。
ちょっと前に羅列した作品タイトルからわかるように、このシリーズは口裂け女や河童といったような、有名な都市伝説・妖怪などがモチーフになっています。
ホラー番組制作スタッフ(という設定)の工藤という男が、アシスタントディレクターの市川(女)、カメラマンの田代(男)とともに、視聴者から送られてきた怪奇現象を取材するというドキュメンタリー風フィクションの内容になっています。
しかし、これらの怪奇現象の裏側には、恐るべきもうひとつの真実『神の世界』が存在するというのが、白石晃士監督の世界観の魅力たる部分でしょう。
白石晃士監督の世界には明確に『神と呼ばれる存在』が登場します。
とはいっても、我々が神と言われて思い浮かべるような神像や仏像とは大きく異なります。
単純に、人間の姿をした人間の上位互換的存在ではないのです。
それどころか、神と名状するにはあまりにおぞましいような姿をしています。
実際、バケモノと呼んで差し支えない存在です。
作中でも神を神として崇めているのはカルティストたちばかりです。
白石晃士監督ユニバースの神、あるいはバケモノには『認知度(知名度)が高ければ高いほど強い』という特徴があります。
つまり人気であればあるほど火力補正がかかります。このあたりFateシリーズに似たものを感じますね。
この認知度というのは作中の認知度です。なので作中でカルティストや教団が存在するような神はそもそも強いです。
そして、ここが『ドキュメンタリー風フィクション』のキモでもあります。
この作品を見る視聴者は、作中世界において『ノンフィクションであり、ドキュメンタリー・ホラーである「コワすぎ!」のDVDを買ってorレンタルして視聴している』という体裁になります。
作中世界の人物である視聴者が、DVDを通して神を認知するのです。
そう、つまり「コワすぎ!」を見る人数が増えれば増えるほど、神はより強大な存在になっていきます。
我々視聴者が、その神を認識するほどに。
そしてもうひとつ。
白石晃士監督ユニバースの神は、この世界に存在している神ではありません。
特殊な空間を通じてやってくる『異世界より来たりしモノ』です。
それらは我々がよく知っている「都市伝説や怪奇現象」を通して、こちらの世界へやってこようとしています。
その『異世界より来たりしモノ』を強大にしているのは、まぎれもなく視聴者たちなのです。
『視聴者と画面の向こうの世界の垣根を曖昧にし、本当に身近で起きていることなのだ』と思わせることこそが、白石晃士監督の描くホラーなのでしょう。
現実と虚構が曖昧になり、気がついたときには『異世界より来たりしモノ』が、視聴者の耳元で生温かい息を吐きかけている。
白石晃士監督の世界構築の手腕に、私はただ舌を巻くばかりです。
……とまぁ、実際はバケモンとキャットファイトするような作品なんで、頭ゆるっゆるで見たいときにもオススメです。
ゲッラゲラ笑いながら、現実が映像の向こうに取り込まれていく奇異なる体験を楽しんで下さい。
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